その視界を彩るもの
『そう…、そういうことなのね』
そんなことを呟かれても、あたしには何がなんだかさっぱりで。
とにかく先ほどまで漂っていた不穏な空気はすっかり影を潜め始めたから、途中まで食べ進めていたホットケーキに再度フォークを向かわせた。
しかしながら、そんな図太いあたしの行動がイサゾーにとって意外だったようで。
『アンタ……気にならないワケ?』
「へ?」
『へ?じゃなくって。どうしてアタシがアンタと梢が会ったってわかったのか、気にならないの?って』
半ば呆れたようにそうこぼすイサゾー。
いや、そんなことを言われても。
「だってなんか一人で納得しちゃってるし、どうせ後で吐かせるから良いかなって」
ホットケーキを口許に運びながら上目遣いにそう述べるあたしを見て、一度目を丸くした奴はやれやれと首を振る。
その反応に思わずムッと眉根を寄せるあたしだったけれど、
『アンタらしいっていうかなんて言うか……、まあ、然もありなんってね』
「さもありなんってなに」と思ったのは内緒。
けれど、イサゾーの嬉しさの混じた表情を目の当たりにしてヘラリと笑みを浮かべておいた。