その視界を彩るもの
「で、なにに納得してたの?」
気付けばあたしの皿は空。けれど、それよりもずっと前にイサゾーのぶんのホットケーキは姿を消してしまっていた。
いつの間に、と自らの目を疑っているあたしを尻目に奴はと言うと。
『あのね、そのジャムなんだけど』
キッチンに置いておいたジャムのビンを指差したイサゾー。
『作ったのは100%あの子、梢だから』
間髪を容れず、その口から爆弾発言が投下された。
「―――……え?」
思考が追い付かないあたしは、目を白黒させてイサゾーを見遣るのみ。
そんな視線を受けたやつは可笑しいと言わんばかりの笑みでその口許を飾ってみせる。
え、ちょっと待って?
てっきり梢ちゃんママお手製だと思っていたイチゴジャムが、梢ちゃんの自作だったってこと!?
でも、なんで?梢ちゃんが嘘吐く必要なんて無くない?
脳裏をぐるぐると思考が占拠し始めたあたしは、見る目明らかに混乱していて。
イサゾーは全て解ったような余裕の笑みで麦茶を飲んでいる。
やっとのことで吐き出した言葉は、狼狽の色を多分に含んでしまっていた。
「なんで?」
三文字だけだったけれど、たぶんコイツには伝わったと思う。