その視界を彩るもの




――翌朝。

いつも通りの時間に起きて、いつも通り濃い化粧で仮面を塗り固めていく。

全て平素通り、何の変哲もない1日の始まり。


玄関の扉を開けて晴れ渡る空を仰ぎ見ては、これから待ち受けるであろう未来を瞑目して想う。



ハニーブラウンの腰まで伸びたミックス巻きのヘアー。

背負うのはワイヤーの抜いた中身の少ないペタンコなサブバッグ。

それを装飾するように踊るたくさんのキャラもののストラップやキーホルダー。

隻手に握るスマホにも同様にたくさんのキャラグッズたち。




「……だいじょうぶ」


あたしには心強い味方が付いているんだから。




片手で持つには大きすぎる画面をタップして切り替えれば、朝からくだらないやり取りをしている相手からメッセージを受信。

一瞬の迷いもなくトーク画面を表示すれば、待ち受ける無数の文字たち。


その最新のものを目にしたあたしは、期せず堪えきれない笑みを吹き出した。




【もし転校するならアタシのとこ来たら?なんてね☆】





イサゾーと一緒に高校生活を送るのも悪くない。

でも、それって逃げじゃん?あたし負けたくないんだよね。

理由もなく「柳勇蔵」の隣に居た日々にピリオドを打てた。

イサゾーが与えてくれたもの。

それにちゃんと応えていきたいから。




【負けないように祈ってて】






もしかしたらアングラな人たちに狙われる日々の幕開けになるかもしれない。

「天龍の柳の女」を狙ってくる外道がたくさん居るかもしれない。

片や「読モの柳くんの彼女」の存在を不快に思って突っ掛かってくる子も居るかもしれない。



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