その視界を彩るもの
通い慣れたドラッグストア。
そのお陰もあるのだろう、難無く辿りつくことの出来た化粧品売り場に思わず頬が緩む。微細に、だけれど。
でかでかと掲示された広告には目的のそれ。
しかしながら、するりと視線をおとし商品棚を見つめたあたしは愕然とした。
「!!」
例の新作アイシャドウは、残りひとつになっていたのだ。
迷うことなく隻手をそこへと向かわせる。
あと30センチ、20センチ、10センチ―――……
確実に縮まる距離と共にあたしの胸が高鳴りを告げる。
ほんと、運が良いとしか言えない。あたしってば今日一位だったのかな―――嗚呼、さっきまで最悪だったけれど。
シャドウへと指先が触れた―――その、瞬間だった。
「『あ』」
ぶつかる筈のない感覚にどきりと心臓が悲鳴を上げ、思わず。鋭く息を呑んだあたしは伸ばしていた腕を引っ込めてしまった。
まさか隣に人が居たなんて。完全に油断していた、気付かなかった。
しかしながら、ちらりと真横にスライドさせた視線で判ったこと。
どうやらその人物も、あたしの存在に驚き腕を引っ込めてしまったらしく。
「、ごめんなさい貰います……!」
相手の顔も碌に見ずに、己の欲に従った行動を取るとそうなってしまった。
短く叫んだあたしは再度手を伸ばし、シャドウを掴み上げる。