その視界を彩るもの




彼女がそんな決意をして学校への道を進んでいく一方で、かの万里少年はとあるコンビニに立ち寄っていたらしい。

そんな彼が目にしたのは一冊のファッション雑誌。

普段ならば素通りするところだが、なぜかこの日は立ち止まった。

その表紙を飾るのが彼自身の知り合いだったからだ。



「(……柳?)」



眉根を寄せて雑誌を手に取る。

ページを捲っていく。

そしてある特集のところまで到達したその瞬間、彼はピタリと動作を止めた。






「……この女……」





雑誌の向こうで恥じらうように柳に寄り添うシノサキウイを目にしてはこぼれ落ちる呟き。

普段と装いが違うにしろ同一人物であることに変わりはない。

現に、少年は迷いなくそれがあの日の彼女であることに気付いたのだから。


ふとガラスの向こうが騒がしいことを知る。

徐に雑誌へと落としていた視線を持ち上げれば、自ずと視界に映り込むガラの悪そうな連中。


中でも、大型二輪に跨りながらゲラゲラと下卑た笑みを浮かべる一人の男の手にあるものに視線を奪われる。

目を見張ってその光景を睨むと同時に口を衝いて出る舌打ち。

力なく閉じた雑誌を売り場に戻し、少年はスマホを取り出す。


そして耳元に宛がうと鳴り出すコール音に瞑目し、相手が受話するのを待つこと数秒。



"―――万里?"

「あぁ。ナツキか?マズいことになった」





苛れる表情もそのままに捲し立てるように言葉を重ねる。

当の彼女や彼は、目まぐるしいスピードで変化する周囲や環境には未だ気付かないままだった――



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