その視界を彩るもの
/後生だと云うのなら
立ち止まって見上げるのは通い慣れた高校。
偏差値は県内で真ん中くらい。まあ、全てにおいて平凡だと言わざるを得ない場所。
通っている生徒だって進学と就職で半々くらい。
「………」
あたしを通りすぎて校門を通過していく生徒全てが、好奇の視線を向けてくるような錯覚に陥る。
そんな訳ない。そんな、全ての人間の関心がたかが一冊のファッション雑誌に集まることなんて有り得ない。
それに発売日は今日なんだから、知っている人のほうが稀なんだし。
きっと、あたしの心が不安定でグラグラ揺れているからそんなことを感じるんだと思う。
イサゾーの言葉が詰まったスマホを胸元でぎゅっと握り締める。
大丈夫、あたしは独りで闘うんじゃない。
逆にこれでハッキリする。
今日を機に離れていくのは、それまでだった子に過ぎない。ただそれだけのこと。
……なんて、今まで表面的な付き合いばかりしていたあたしを「それ以上」だと思ってくれる子なんて居ないだろうけれど。
だからこんなにも憂鬱に思うのかもしれない。
言ってみれば自業自得。
全ては日頃の行いの所為。
まあ、路線をガラッと変えてこれからは優等生狙ってみるのも良いかもしれない。
―――予防線を張るのは受ける傷を出来る限り小さいものにしておきたいから。
これまでは行動に移さなかったアカネでも、当のあたしたちがこんなあからさまな事を起こせば黙っている筈がないから。
アカネはイサゾーのことが好き。
でもきっと、それは心から想うものじゃない。
アカネの気持ちに比べれば、友情だろうが愛情だろうが深くイサゾーを想っている自信がある。
そう、これから待ち受けているのはその試練のようなもの。
考え方を変えてしまえば、今までの慄きなんてまるで嘘みたいに消えた。