その視界を彩るもの
あれだけ入るのを躊躇していた校舎に軽やかに足を踏み入れる。
なにを恐がっていたんだろう。
これまでだって、イサゾーがあたしを迎えに来たりしていたんだから。
アカネの吹聴によって「付き合ってる」って噂が流れてもいたんだから。
ただ、今日はその「不確実」が「確実」に変わっただけのこと。
もしかしたら騒ぎも何も、普段と何ら変わりのない日々が待っているんじゃないかって。
―――ガラッ
……でもやっぱり教室の扉を開けたときには、そんなのは所詮淡い期待に過ぎないんだって突き付けられた。
まざまざと思い知った。
視界に映るもの全てはあたしの想像通りだった。
ただ一つだけ違うのは、
「あれ、ウイはよー」
何事もなかったかのように笑んで挨拶をしてくるアカネの存在だけだった。