その視界を彩るもの
周りの生徒はあたしが教室の扉を開けるや否や、ヒソヒソと会話を始めていたのに。
ユカリやアキホですらあたしの顔を見ようとせず、頬杖突いて別方向へと視線を飛ばしていたのに。
……なんで選りによってアカネが声を掛けてくるのか、全く以て理解不能だった。
「……おはよう」
怪訝な面持ちを隠しきることは叶わなかったけれど、無視するのは気が引けたからそう返す。
そんなあたしを見てニッコリと洗練された笑みを貼り付けるアカネ。
一体なにを考えているのか。
あたしが思案したところで明確な答えが出る筈もなく、追うように教室に入った担任によってあたしは席に着くことになる。