その視界を彩るもの




「――なんでアンタなんかが柳くんの彼女面してんだよッ!」

「いたッ…!」




強く叩き付けられた肩が悲鳴を上げて痛みを訴えてくる。

衝撃に閉じた瞳を薄らと開けば、目の前を陣取る1コ上の先輩がたの姿。


呼び出されたのはつい先ほど。

嫌な予感は痛いほど感じていたけれど、ここで断れば「逃げ」も同然だと思って渋々その後を付いていった。

その予感は見事的中。

校内でもヒト気のない女子トイレに連れ込まれ、気付けば強く壁に叩き付けられていた。





「アンタ自分のしたことわかってんの?ねえ?」

「……わかってます」

「わかってないだろうが!柳くんは"みんなのもの"なんだよ!」

「そんな、」


無茶苦茶すぎる。

そうは思ったけれど、口にしたところで更に強く当たられることは必至だから唇を噛み締めた。


この先輩はイサゾーのことを一体なんだと思っているんだろう?

みんなの柳くん?

イサゾーは自分が幸せになることを願っちゃいけないわけ?


余りに理不尽な物言いに脳裏を反発心ばかりが渦巻いて、我慢できずに吐露しようとした瞬間だった。





「大体アンタのせいで柳くんの人気が落ちたらどうしてくれんの?」

「……なんであたしが関係あるんですか」

「今までは"皆のモノ"って思ってたから近付きもせずに耐えてたに決まってるじゃん!それを何よ、いきなり出てきたようなアンタが彼女だなんて信じられるハズないじゃない!」



頭に冷水をぶっ掛けられたような気分がした。



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