その視界を彩るもの
申し訳程度のチャイムに迎えられて一軒のカフェ店内へと足を進める。
そして案内された席は窓際の奥まった場所だった。
「梢ちゃん何飲む?」
ウエイターが置いていったメニューに視線をおとしながら問い掛けると、「初さんと同じもので」と笑む梢ちゃん。
私服姿の彼女を見るのは二度目だけれど、やっぱり本当に可愛い。
長話になりそうだから、メニュー写真で見ると大き目に感じたアイスティーをふたつ注文する。
「それにしてもどうしたんですか?嬉しかったけど、びっくりしちゃいました」
「あはは……そうだよね。ごめん」
がさつな手付きで頭を掻いては視線を下げる。
そんなあたしを見ている梢ちゃんもきっと眉尻を下げているんだろうな、って。
ほら、この子すごく優しいから。
「初さん、今日会ったときから思ってたんですけど」
「うん?どうし――」
「何かありましたか?……いや、"なにか"あったんですね」
言い直してまで断言してみせた梢ちゃんに嫌でも目を見開く。
まったく予想していなかったコトバ。
だからこそ何の構えもしていなかったから。
……だから、不意打ちで核心を突かれたあたしは面白いほど取り乱す。
「初さん、ずっと視線下げたままじゃないですか。この間に比べてずっとずっと元気無いです」
「……梢ちゃん」
「私が聞いちゃ駄目なのかもしれないですけど。でも、心配するなってほうが無理なんじゃないかって……生意気言ってすみません」
言葉尻に向けてどんどん覇気を無くしていく梢ちゃんに、ふるふる首を振って否定した。
違う、ごめん。悪いのはあたしだ。