その視界を彩るもの
……ねえ、初さん。
どうしてそんな瞳で居るんですか。
どうしてそんな表情で俯くんですか。
「……私は初さんのために、何かできることはありませんか」
「え?」
「勇兄の彼女じゃないって聞いて、少なからずショックなことは確かです。でも、私はもう初さんのことが好きです。こんなお姉ちゃんが居たらなっていつも思います」
「梢ちゃん…、」
私を見つめる彼女の瞳がユラユラと揺れる。
でも未だ素のその瞳には翳りが一筋差したまま。
こういうときに女の勘っていうのは働くんだと思う。
だって証拠に、視線を交えただけで初さんの思いが緊と伝わってくる気がしたから。
「初さんはもしかして、迷ってるんじゃないですか?」
その瞳に薄らと涙の膜が張る。
ゆらゆらと朧げに眸を揺らす。
「勇兄のことを恋愛対象として見ているのか、友だちとして好きなのか……。自分でもその想いが、わからなくなってしまってるんじゃないですか?」
そして、その網膜の最奥に潜む禍福そのものを垣間見た。