その視界を彩るもの
/彼女の想う、抱くもの
梢ちゃんと話をしたあの日から、更に幾日かが経過したように思う。
ずっと恐れていた事実を吐露したのに、彼女は離れるどころか更にあたしに親身になってくれた。
それは更にあたしの中で梢ちゃんへの信頼が増したことを意味していて。
「篠崎さん」
あんなに憂鬱に感じていた学校生活ですら苦じゃないと感じてしまうほど。
頬杖を突いて視線を窓の外に投げていたあたしの耳に、ソプラノの声音がスルリと飛び込んでくる。
すっかり定番と化してしまった「不本意ながらのナチュラルメイク」を施した顔面を声のした方へと向けてみれば、腕を組んで眉尻を吊り上げた同学年の女の子たちと視線が交差した。
どうやら、ここ数週間を経てあたしは驚くほど打たれ強くなったらしい。
あからさまに肩を落としては深い溜め息を披露し、更に「なに」とぶっきら棒極まりない声音を向ければ彼女たちの柳眉がピクリと痙攣した。
「ちょっと一緒に来てくれない?話あるんだけど」
「……どうせイサゾーのことでしょ?なに?別に今話せばいいじゃん」
「はあ?」
開き直ったようにそう告げて腕を組み、どっかりと背凭れに深く背を預けたあたし。
そんな此方の様子が意外だったらしい彼女らは一度大きく目を見開くも、次の瞬間には憤怒に表情を一変させる。
ま、今までは言われるがままに付いて行ったりしていたから。
それが当たり前の反応なんだとは思うけれど。
「っ、いいから立てよ!来いっつってんの!!」
しかしながら、後に少なからずあたしは自分の行動を悔やむことになる――。