その視界を彩るもの
「………なに」
怪訝さ剥き出しでそう問うたあたしに対し、アカネは一切の動揺もなくただそこに佇んでいて。
真面目なカオ。
引き結ばれた唇。
いつもと同じようにぐるぐると巻かれたトップヘアは、心なしか平素のそれよりも覇気がない気がした。
「なんで、」
アカネが口を開く。そして初めて、表情が色付いていく。
「なんでッ、初はなんも頼ってこないの!?」
そして声を張り上げて向けられた言葉に大きく目を見開いた。
肩を上下させて心の内を吐露したアカネは、不思議といつもの彼女よりも「人間」らしく見えた。
ニヒルな笑みと蠱惑的なルージュ。
離れていても届くほど強烈なコロンの香り。
自分でも自覚しているだろうその絶対的存在感。
これまで周囲の中で形成してきたアカネの印象それらを全て取っ払って、一人の「人間」としてのアカネがあたしにぶつかってきていた。
「ユカリとかアキホとかッ、みんなが離れていっても平気そうなカオばっかしてんじゃん!」
「……アカネ」
アカネが一歩あたしに近付く。
「なんで!?なんで初は弱いトコ見せようとしないの!?そんなにウチらが信用できないのかよ!」
「ウチら、って。そう言ってもユカリたちは実際離れていってんじゃん」
「あたしが離れるように仕向けたんだよ!!」
「―――…は?」
思わず耳を疑った。