その視界を彩るもの
アカネに背を向けて視界の隅に映る昇降口へと方向を違えた。
そして一歩を踏み出そうとした瞬間、
「―――ッ、た!」
背中に与えられた強い衝撃に思わず目が飛び出しそうになる。
慌てて後ろを振り向けばあたしの背中に頭……って言うかアップにした団子をくっ付けているアカネの姿。
勢い余って突進してきたせいで、そのセットされた髪の毛は見る目明らかにぐちゃぐちゃだった。
「………め、うい……」
涙に濡れたその声音。
少なからず身を捩って抵抗していたあたしの動作はピタリとストップした。
恐ろしいほど静まり返った廊下で、背中に頭を付けるアカネからこぼれる言葉に意識を傾ける。
「ごめん、初」
今度こそハッキリと聞き取れたその言葉。
プライドの高いアカネから聞くことなんてきっと、もう二度と無いんじゃないかとすら思う。
だからこそ価値がある。
だからこそ思いの丈が理解できる。
きっとアカネは自分のしてしまったことに、これ以上ないくらい後悔の念を抱いている。