その視界を彩るもの
――――やってしまった。
思わず垂れ下げていた腕を引き上げ思い切り口許を手で、覆うものの。
おとした言葉を拾うことなんて勿論できる筈もなくて。
別にあたしは偏見を持ち合わせているタチじゃないし。
そりゃまあ、少しは思ったけれど。
男のくせにオネエ言葉をつかうなんて変だなあとか、新作シャドウの入手にそんなにも迫り立てられているのはなんで?とか。
「(………しかもこれが、)」
中々のイケメンなのだ。少なくとも先刻居合わせた男どもの数倍はカッコいい。と、思う。
ちらりと視線を持ち上げるものの、チキンなあたしは謝罪をすることもその顔面を直視することも出来なくて。
シャドウを握る手のひらにじわりと冷や汗が滲む。
ばくばくと早鐘を打つ心音を抱えたまま、ずっとそうしている訳にはいかないことを頭の隅では理解していたけれど。
『………プッ、』
そんな吹き出す声に驚くあたしは文字通り、目を丸くする。
動揺してしまった。あんなにも必死になって掴み上げたシャドウを握る手からは力が抜けおちてしまっていて、それすらも気付かなくて。
『スキアリ』
「―――……あ、ちょっと!!」