その視界を彩るもの
「アカネ……ごめん、もっかい言ってくれる?悪いけど聞き取れなかっ、」
「ずっと好きだった。初のことが。だから初がアイツ――柳とつるみ始めてからあたしすっごく焦って、それで。……柳のことが好きだなんてウソ、吐いちまったんだ……」
「そしたら初がアイツから離れて、あたしのとこに戻ってきてくれるんじゃないかって」
頭が痛い……混乱する。
ちょっと待って、整理させてよ。
――…アカネが好きなのはイサゾーじゃなくて、あたしのこと?
こめかみを押さえて突っ立っているあたしを、いつの間にか抱きすくめるようにして腕を強くまわしていたアカネ。
痩躯が背後からきつくあたしに巻き付く。
密着した身体から体温が伝わってくる。
「本当は憧れてただけだったんだ。こうやって化粧濃くしてギャル気取ってれば、初と近付けるんじゃないかって」
アカネとの出逢いに思いを馳せる。
でもあまりハッキリとは思い出せなくて。
いつの間にか似たような人間同士で固まって、グループ作って。……その中に偶然アカネとあたしが居たんだと思っていたから。
「毎日つるむようになってから、あたしやっぱり初のことが好きなんだって。クールな初にもドキドキするし、たまに笑った顔とか見ると我慢できなくなりそうだった」
「……アカネッ、!?」
「ずっと触れたくてしょうがなかったんだよ。あたし今ヤバイくらいドキドキしてる」
あたしの身動きを封じていたアカネの腕がひっそりと動き出す。
や、やばいやばいやばい…!このままじゃ雰囲気に流される!
まさか女相手に貞操の危機を感じる日がくるなんて思いもしなかったけれど、そんなことを言ってられないほど状況は切迫していた。