その視界を彩るもの




「(―――…イサゾーッ!!)」


こんなときにも心に叫ぶ名前はアイツのもので。

正直自分自身に酷く呆れてしまった。

だってここはあたしが通う高校だし、従ってアイツが来られるわけが―――




『悪いけどその手…離してくれる?ソレ、俺のだから』


……あったみたい。




いきなり鼓膜を揺らした中性的な声音に顔を勢いよく持ち上げる。

そして視界に映り込んだイサゾー。

腕組みをして仁王立ちしている奴は眼光鋭くアカネを睨め付けていて、視線を受けていないあたしですらブルリと身震いしてしまった。



「………なんでアンタが入って来れんの?ここの生徒じゃないんでしょ?」

『愛の力があればそんなの朝飯前なんだよね』

「ハァ?バッカじゃないの?て言うか女同士がどうしてようがアンタに関係なくない?単なるスキンシップだっつーの」





イサゾー相手に強い口調で吐き捨てるように言うアカネ。

その様子から察するに先ほど言われた言葉はあながち嘘じゃないらしい。


でもこれをスキンシップと言うかお前!

今はストップしているけど明らかにいかがわしさを伴って動いていた手。

っていうか胸の下に置かないでよ!なんか嫌だよ!やめておくれよ!


あの衝撃的な告白を受けたあとのせいもあって、その手がまたまさぐり始めるんじゃないかと気が気じゃない。

だから「助けて助けて助けて」と、目からビームでも出せるくらいに視線でイサゾーに訴え掛けていたけれど。





『……話聞かせてもらったから。アンタがそいつ……初をそういう目で見てるんなら、そのまま野放しにしておくワケにはいかない』


まさかあの告白まで聞かれていたなんて、ちょっと予想外だったから驚いた。



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