その視界を彩るもの
茜色に染められた界隈は冬到来ということもあって物静かだった。
まだ放課後じゃない時間だけどイサゾーと肩を並べて歩いていく。
白く色付く吐いた息を見つめていたら、もうすぐ傍まで校門が迫っていたことに気付いた。
隣に居る巷で有名な「王子様」を見つめていれば、あたしの視線を受けた奴がそっと見下ろしてくる。
『なーにジロジロ見てんのよ。見物料取るわよ』
「ハッ、何様のつもりだよ」
『アンタねえ!もう!その言葉そっくりそのまま返すわよ!?』
「……ねえイサゾー」
ぽつり、言葉を吐き出した。
嗚呼もう、冬だな。冬がきた。そろそろ雪とかも降るんだろうな。
あたしが吐き出した言葉の先を待つように、イサゾーはただ静かにしていてくれた。
それが今は心地好かった。
「好きになるって、嬉しいばっかじゃないんだね」
さっきまであたしの背中に縋り付いていたアカネはもう自分の力で立っていた。
でもそれは違うのかもしれない。
だって自分の背中に隠すようにしまっていた両腕は、今にも泣きだしそうなほど震えていた。
当のあたしがベラベラ口出しすることじゃないと思う。
でも同性相手に抱いてしまったからこそ簡単には言えない感情だったんじゃないかって。
今まで全然知らなかった。
でも逆を言えば気付こうともしなかった。
あたしが少しでもアカネ自身の身になって物事を考えたりしていたら、きっとこんな風にはならなかった。
「初を弱い立場にしてしまえば、きっと自分に頼らざるを得なくなる」
アカネにそう思わせてしまったあたしだってきっと悪い。
日頃からちゃんとアカネたちに心を開いていれば、きっと違う未来がきていたんだと思う。