その視界を彩るもの
『……今は同性の恋愛だってザラだから。それにあたし言ったじゃない?』
「ん?」
『アンタは同性に好かれやすい性格してる、ってね』
ウインク混じりにそう言ってみせるイサゾー。
思わず「おえええ」ゲロを吐く素振りをしてやれば、『てめ、このアマいい度胸してんじゃねえか』完全にスイッチの入ったイサゾーが目の色を変えて突進してきた。
だからあたしは全力でその攻撃をかわした。
すると更に奴は追い打ちを掛けてきたから、あたしは脱兎のごとく駆け出した。
イサゾーから逃げながら先ほどのアカネとのやり取りを思い出す。
全てを語って、今度こそ校舎をあとにしようとしたあたしにアカネは言った。
―――「あたしもユカリもアキホも、初の味方だからッ……!今は信じなくていいから、お願いだから学校辞めるなんて言わないでよ」
―――「ウチらも一緒に闘う。初が呼び出しくらったらあたしらも付いてく。それで初はサイアクな女なんかじゃないって、"最高のダチ"だって、言い続けるから!」
『良かったじゃない』
「……なにが?」
いつの間にか完全にトリップしていたあたしの隣に立ち並んだイサゾー。
その嫌みなほど整った横顔を見上げていたら、クスリと綺麗に笑んだ奴はこんな一言を告げた。
『アンタの頭じゃどうせ、アタシのとこに編入なんてムリじゃない?わかってる?編入試験って、普通の入試よりも断然難易度上がってるのよ』
「……さすがにあたしでもそれはわかるよ」
『あらそう?失礼シマシタ』
「棒読みジャナイスカ」
『ソウデモナイワ』
「ケッ」
外方向いて悪態をついたあたしを揶揄するイサゾー。
でもこんな空気は嫌いじゃない。