その視界を彩るもの
短くも間抜けな声を洩らしたあたし。気付いた瞬間には、既に例の新作シャドウは相手の男(?)の手中に渡ってしまっていた。
おねえ言葉をつかうイケメン男子―――長いので"おねえイケメン"と呼ぶことにする。
「ちょっと、返してよそれ!」
『ホント無理。これだけは譲れないのよ、てかアンタだってさっき同じようなコトしてたじゃない!』
「だってアンタが諦め悪いから―――……って!マジで待ってってばッ」
するりと意表を突くように身体を翻したおねえイケメンに目を疑った。
だって、その方向の先にはレジがあるから。
「……アンタっ、」
『さっきの言葉』
「ッ」
短く音に乗せられた台詞を聞いたあたしは、固まる。―――……否、固まらざるを得なかったんだ。
茶色く澄んだビー玉のような瞳から逃げるように顔を俯かせる。
どくどくと尚も厭な鼓動を刻む心音はバカ正直に自らの失態を告げてきていた。どうしようもないくらいに。
『アンタが正直なコで良かった。こっちだってホントはこんな失態晒すつもりなかったのよ、忘れてちょうだい』
―――……予想外な言葉が真上から降ってきた。目を見張って店の床を見つめる。
伸ばした視線の先に映るおねえイケメンが履くお洒落な革靴。
ただ呆然とそれに視点を合わせていれば、不意に視界の隅をチラついた紙に目を奪われることになる。