その視界を彩るもの




そんなある日の放課後のこと。

あたしは足早に待ち合わせ場所のとある駅構内へと歩を進めていた。

イサゾーにはすでに連絡済み。だから奴が待ちぼうけを食う心配も無し。



「あ、初さーん!」

「梢ちゃん!」



やっぱり先を越されたらしい。

どんなに待ち合わせる時間を慎重に指定してもそれよりも早く現れる梢ちゃん。

あたしも早めに来てるんだけど……やっぱり敵わないな。


慌てて彼女の許へと駆けて行くと、笑顔で手を振る梢ちゃんに迎えられた。

ニコニコと親しげに笑む彼女。

「待たせてごめん」とお決まりの謝罪を口にすれば、黒曜石の如く光る瞳に一蹴された。





「いいんですって!私が来たくて来てるんですから。それより、お腹すきません?」




ウインク混じりに提案した梢ちゃんに乗せられる形で、カラッと晴れた冬空のもと外へと繰り出して行く。

道ゆく人々が成す大きな波。

その隙間を縫うようにして辿りついたのは、昔ながらの小さな商店街通りだった。






「……こんな場所があるんだ。知らなかった」

「でしょう?ここの商店街って、私が昔勇兄とよく来た場所なんです。だから初さんにも知ってもらいたくて」

「あたし?」

「だって私が思う勇兄の彼女になって欲しいひと、ナンバーワンですから!」

「も、勿体ないよ」


なんて謙遜しながらも。

正直心の中は嬉しさに溢れ返っていて、そんな胸中が知らずの内に表に出ていたんだと思う。



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