その視界を彩るもの
意のままに笑んだあたしをまじまじと見つめた梢ちゃん。
あまりに深く覗きこんでくるものだから、思わず口を噤んで視線を泳がせた。
もしかして気に障ることをしてしまったんじゃないかって不安に駆られたけれど、
「やっといつもの初さんらしくなりましたね。化粧も戻ったみたいですし……って、あ、何でもないです…」
「いや、いいよ梢ちゃん。またケバくなったのはマジだから」
ほうっと溜め息を吐いてしまいそうなほど可憐に微笑んだ彼女を見るに付けて、そんな心配はやはり杞憂だったと覚った。
それに隠すようなことでもないし。
言うまでも無く学校で「ツケマが取れる心配」を払拭できたあたしは、すっかり以前のようなギャルメイクに戻ってしまっていた。
ついでに言うと休み時間に雑誌を開くのも再開した。
自分の好きなことをまたしようと思えるほど、今の学校生活は過去のそれに戻りつつあったから。
「梢ちゃんには今日ぜんぶ話そうと思ってきたんだ。あとで、聞いてくれる?」
目を見て問い掛けたあたしに対して、「もちろんです!」と彼女は頷いてくれて。
そうと決まれば早くお惣菜やらお菓子やらを買って家に直行!そう決めたらしい。
丁寧にも再び家に招いてくれるらしい彼女を尻目に、やっぱりまた手土産の一つも持参しなかったことに酷く項垂れたわけで。
申し訳程度に過ぎないけれど、せめてもの思いでこの商店街での出費だけは担わせてもらった。