その視界を彩るもの




そしてようやく見覚えのあるドアの前に立つ。

梢ちゃんが鍵を開ける間彼女の持っていた紙袋も抱え込んだ。

気分は買い物で荷物持ちに徹する彼氏役。世の男は大変だ。



「お待たせしてすみません。初さん、どうぞ」

「わ、ありがとう!お邪魔しまーす」



急に軽くなったと思えばニコニコと笑む梢ちゃんが再び紙袋を抱えてくれていて。

申し訳ないと感じつつもいそいそと靴を脱いで並べる。

そして腕を広げて今度はあたしが荷物を受け取ると、玄関先の段差に腰掛けた梢ちゃんがローファーを脱いで揃えた。

バタン、重量感のある玄関扉が閉じた大きな音がする。





「相変わらず何にもないとこですが……、とにかく寒いので暖まりましょう!」

「いやまさかまさか。すごく素敵な内装だよ。お惣菜どうする?」

「あ、すみませんテーブルの上に。いま話しながら食べちゃいますか?」

「お、そーだね。できたてのがウマいしね!」

「りょーかいです!」



そう言いながらもぶるぶる震えた梢ちゃんは余程寒いらしい。

一目散にリビングの最奥へと駆け抜けるなり、手にしたリモコンで暖房を起動させていた。







そしてそのままあたしの許へと駆けてくる。

漆黒のセーラー服を揺らして立ち止まった彼女に促され、中央に位置するテーブルを囲む椅子に腰掛けさせてもらった。




「さて、最初になに食べます?よりどりみどりですよ~」

「梢ちゃんに合わせるよ。なにがいい?」

「いいんですか?……うーん、そしたらコロッケで!」




ガサガサと音を立てて紙袋から取り出す。

案外取り易いところにあったようで、手を入れて直ぐにコロッケが姿を見せた。



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