その視界を彩るもの
* * *
全てを話し終えたとき、梢ちゃんは無言を貫いていた。
思えば相槌も余り聞かなかった。
ひやりと不安に駆られて徐に視線を持ち上げていけば、真摯な瞳であたしを射抜く梢ちゃんと視線が交差した。
「梢ちゃん?」
驚いてその名を口にする。
だって、その大きな目には涙が薄らと膜を張っていたから。
「あッ、ご、ごめんなさい!私ったら黙りきりで、」
「……どうして泣いてるの?」
「だ、だって……」
もごもごと口を開けては閉じる彼女。
言葉が見付からないのかもしれない。
そりゃそうだ。だってあたしだからこんな結果を生んでしまっただけで、もしも他の誰かが「篠崎初」ならきっともっと上手くやれたと思う。
他の誰か……そう、例えば梢ちゃんが。
不器用にしか物事を運べないあたしのやり方に、根本から理解できないのが普通なのかもしれない。
そんなふうに思ってた。
そんなふうに捉えてた。
梢ちゃんがただただ静かに黙秘を貫いていた意味を。
「だってッ!もしも私が初さんの傍に居れたら、もっと早い段階から一緒に闘うことができたのに…!」
だから叫ぶようにそう口にした梢ちゃんの反応は、あたしの度肝を抜くには充分だった。
それと同時に悲しさが込み上げる。
もちろん嬉しい。こんなに素直で必死になってくれる子と出逢えたことが。
これまで他人に踏み込むことを「面倒」の一点張りで頑なに否定していたあたしに対してここまで言ってくれることが。
でもそれと同時に思い出す。
【梢の過去は―――】
あの日他でもない「兄」としてのイサゾーの口から聞いた、惨酷すぎる彼女の運命を。