その視界を彩るもの
/その役目を担うのは
- 万里 side -
眼前に聳える威圧的な扉を足で蹴り飛ばす。
その衝撃で床に転がった男を見て鼻で笑ってやった。ざまあ。
「ッだーーー!てめえコラくそチビ!待ちやがれ!なんつー性格してやがんだテメェ!!」
「俺はチビじゃないし。ていうかナツキ知らない?」
「知らねえも何も知っててもオメェなんかに言うかボケ、」
「あっそ。じゃあいいよ邪魔だから退いて」
ニヒルに笑んで噛み付く男にたまたま手にした雑誌をバサリ、投げてやる。
目元が覆われて奴が身動きできない間に部屋の最奥に位置する扉の前に立つ。
その瞬間に聞こえてきたブツブツ途切れる念仏染みた声音に軽く笑う。
ナツキってばまだ諦めてないわけ?
未練たらたらな男ってのも中々興醒めだと思うけどね。
コンコン、控えめにノックしてみれば直ぐに念仏はストップされる。
次いで刺すように飛んできた「……誰だ」と威嚇する声に余っ程揶揄してやりたい気分だった。
「ナツキ?俺、万里だけど。こないだ電話で話した件で新しい情報入ったから、聞いてよ」
まあそんな、言ってみれば自分の首を締めるような馬鹿げた真似しないけど。
部屋の向こうで物音がするのをぼんやり耳にする。
あーあ、そろそろあのメンドクサイ男が復活しそうなんだけど。
チラチラと絶え間なく入口付近を窺うものの、今はまだここまで追ってくる気配が無い。
どうやら俺が外に出たと勘違いしてくれたらしい。
それにしてもナツキが出てくるのが遅いと眉根を寄せていれば、そういうときに限って眼前で勢いよく開いたドアに思わずぎょっとした。