その視界を彩るもの
/脆弱な感情が向かう先
あたしは段々と元の日常を取り戻しつつあって。
そんな中イサゾーと肩を並べて歩く今は黄昏時。
ふわああ、と大きな欠伸をするイサゾーをチラリと見上げてみる。
そんなあたしになんと直ぐ気付いた奴が視線を交差させるものだから、思わず目を見開いた。
「……なんでわかったんだい?イサゾーくん」
『なんか不気味な視線を感じたからよ。ヒシヒシと』
「ひ、ひどいなあ」
『アンタそう言うけどね。アタシがアンタと今日顔合わせたのってさっきよ?つい数分前よ?それなのにもう19回もチラ見してくるなんて不気味以外の何物でもないじゃない』
「あたしはその回数を数えてることに驚きだよ」
『だってアンタ、呪われたりしたらイヤじゃない。20回までいったらさすがに何か起こりそうだから19回目の今勇気を振り絞って言ったのよ』
「そんなことを思われてることを呪いたいよ、もう」
やれやれと首を振って大袈裟に溜め息。
そんなあたしを尚も見下ろすイサゾーは頭上に「?」を浮かべて首を傾げている。
呪うだなんてそんなまさか!
ちっぽけな勇気を奮い起そうとしていたあたしは、途端に自分自身が可哀相に思えて仕方なかった。
あんなに強く胸に誓ったあの日が遥か昔のことに思えてくる。
タイミングを探っては告白してやろうと意気込んだのも束の間、当の本人に『不気味』だと言われ傷付かない筈がないと思いません?
まさか告白するタイミングをはかる行為そのものを『呪い』だと疑われるなんて、これっぽっちも予想していなかったんだけど!