その視界を彩るもの
「イサゾーくうううん」
でれでれと顔の筋肉を綻ばせて奴の名を呼び、すり寄るあたし。
怪訝だと言わんばかりに目を細めたイサゾーは『ゲッ』と口にし慌てて遠ざかる。
なーんかイサゾーってそういうところあるよね。
なんて言うの?照れ屋?君ってば案外照れ屋さんなの??
『……アンタちょっと、離れなさいよ』
「イヤだねー」
『なんでアタシの前ではピーチクパーチクうるさいのよ。あの子……アカネだっけ?学校のダチと話してるときは全然そんな素振り無かったじゃない』
「それは篠崎氏の仮の姿なのだよ、イサゾーくん」
『学校に行ってその猫かぶり暴いてやろうか?』
「な、なんでいきなり低い声で威嚇するのさ」
慌ててイサゾーの腕に絡ませていた自らの腕を引っこ抜く。
うわあ、あたしってば大胆。無意識の内にこんな行動取っちゃうなんて。
双手で頬を包んで「うわああああ」真っ赤に染まるそこの冷却に追われていれば、更に厳しさの増した双眸であたしを射抜くイサゾー。
どうやらこの行動の意味が心底解らないらしい。
こりゃ、マジでド直球に告らなきゃ伝わらないような気がするよ……。
げんなりと肩を落としてこれ見よがしに溜め息を吐き出す。そんなあたしの行動を理解することを放棄したらしい奴はシカトこいて先に行きやがった。
……まあでも考えてみれば自ずと理解できるかも。
無意識っていうか、無自覚なときからあたし自分でも引くくらいイサゾーにベッタリだったから。
うん、そうだ。やっぱり気持ちを伝えるときは清々しいほど直球で挑んでやろう。
変化球なんて技に肖ろうとすれば失敗するのは目に見えている。