その視界を彩るもの
/ただ真直ぐに、本能的に
くああ、と込み上げる欠伸を噛み殺せば滲む涙が視界を遮る。
ぽかぽかと日差しに中てられて幾度となく襲ってくる眠気。
珍しく遅い梢ちゃんを待ち合わせ場所の駅、改札付近で待ちながら呆けてみる。
とは言っても季節は冬。外気は刺すように冷たいので首に巻いたマフラーに口許まで潜らせた。
今日はイサゾーから提案された例の「お茶会」当日。
直前まで雑誌の撮影があるらしいイサゾーは現地で集合することになり、梢ちゃんとあたしはそれまで二人でぶらぶらと買い物でもすることになっていた。
のだけれど、待ち合わせ時間を少し過ぎても当の梢ちゃんが現れない。
いつも早すぎるほど早めに来る彼女を今度こそ待たせる訳にはいかないと意気込んだあたしは、指定時刻の30分前からこの場所で待機していたわけで。
他の誰かだったら気にすることもないけれど、いつもは驚くほど早く現れる梢ちゃんだからこそ連絡しようにもし辛かったりする。
だって指定された時刻は先ほど過ぎたばかりだし、何だか急かしてしまう気がして。
でもでも、こうしている内に梢ちゃんの身に何かがあったりしたら‥‥?
一人で葛藤すればするほど、時間が経つのが遅く感じる。大幅に過ぎてくれたら躊躇わずに連絡できるのに。
駅構内の柱に取り付けられた大きな時計が10時4分を指すのを認めた、その瞬間のこと。
「――‥ッ、初さんっ‥‥!」
息も絶え絶えにあたしの前に滑り込んだ、梢ちゃんが叫号と共に姿を現した。