その視界を彩るもの
* * *
"公園だとカラスとか居るじゃない。ムリ" 13:47
13:50 既読 "ファミレスとか?"
"はぁ?アンタ他の客の迷惑考えなさいよ" 13:55
13:57 既読 "じゃあそっちが決めてよ"
"ちょっと待って、十分後" 14:00
画面に並んでいく文字を見つめながら、そわそわと落ち着かないあたしはポッキーを口に運ぶ。
昨日条件を出したのはあたし。
そして連絡を取る手段として今主流なアプリのIDを教えてくれたのはあっち。
スタンプも何もない平凡なトーク画面。だけれど、いまあたしが一番返信を心待ちにしている相手は言うまでも無い。
「初、一本ちょーだい」
「ん」
「なにちょっとー、楽しそうじゃない?」
「………まあね」
指先でつまんだポッキーをゆらゆら揺らしながら此方を見つめるアカネを見返してニヤリ、と。
口角上げて上機嫌ぶりを露骨に示してみせるあたし。
大好きなポッキーを銜えながらも、スマホがバイブする瞬間を今か今かと待ち望む。
ブラックアウトしたスマホを転がす指先では、いつも通りネイルが煌めく。
ワイヤーを全て抜いてペッタンコになったスクールバッグから取り出した雑誌に、いつも通り視線をおとす。
目の前でぎゃははと談笑を繰り広げるアカネたちも、いつも通り。
「(やばい。にやける)」
しかしながら緩む口許をお気に入りの雑誌で覆い隠すあたり、あたしの気分は平素のそれを遥かに超越していることは明らかだった。