その視界を彩るもの
そう問い掛けた瞬間に「ボン!」と音を出して赤く染まる梢ちゃんの顔。
思わず目を見張ってその様子を見つめた。
そんなあたしの耳に届く、蚊の鳴くような声で「‥‥から」とぼそぼそ呟く声音が。
余りにも小さい声音に身を乗り出してもう一度だけ訊き直すと、勢いよく顔を上げた梢ちゃんと視線が交差し「う、おっ」小さく驚きを口にしてしまう。
それにしても「うお」って、‥‥あたしは男かっての。
まあ少女マンガから飛び出してきたような梢ちゃんと並ぶような女じゃないとは思うけどさ‥‥。
「勇兄、読者モデルだから。‥‥だから妹の私が変な恰好で一緒に居たら、ちょっと、」
「周りからの目が不安だった?」
「‥‥、はい」
あれ、どうしよう可笑しいな。
梢ちゃんからほわほわと薄いピンク色のオーラが漂っている気がする。
‥‥これが所謂「守ってあげたいオーラ」か。女のあたしが梢ちゃん相手に察知してしまうってどういうことだろう。
それに妹である梢ちゃんはこんなにもイサゾーを想って考えていると云うのに、仮にも世間的には「彼女」のあたしが無頓着なのって‥‥ヤバくない?
いや、普通に楽しんでコーデして来ちゃってるけどさ。
この今日の服装がイサゾーのためを思ってのものかって訊かれると、YESとは答えられない。
「梢ちゃん、‥‥今日から彼女の座をバトンタッチしようか?」
「え!? なんでですか!?」
「いやあはは!冗談‥‥だよーん」
このときあたしは余っ程思った。
もしも梢ちゃんがイサゾーの妹じゃ無かったら、奴のハートを真っ先に射止めていただろうと。