その視界を彩るもの
焦って弁解しても後の祭だった。
梢ちゃんは完全にあたしにストーカーだと思われたと確信したらしく、その主張は梃子でも動かなくて。
あれ‥‥この子ってこんな頑固だったっけ‥‥?
内心冷や汗だらだらで只管に宥めて漸く納得してもらえた。
しかしながらその行為に費やした時間は目を見張るほどのものだった。
「あ、いけない!そろそろですね」
向かい側で華奢な腰を下ろす梢ちゃんに促されてふと時計に視線を向ければ、その事実に数秒フリーズしてしまったほど。
すっかり機嫌も元通りな梢ちゃんが惜しげもなく笑んであたしの腕を引く。
こうしていると何だか姉妹にでもなった気分だった。
でも、ああやってマイナスな思考で我が道を行ってしまう梢ちゃんの姿というのは中々どうして意外なもので。
やっぱり彼女も完璧な人間なんかじゃないって突き付けられた気がする。
立ち止まったっていい。
まあ、今回のは若干の笑い草的要素を否めないけれど。
そうして立ち止まって自分じゃどうしようもなったときに手を差し伸べる人間の中に、ずっとあたしも居たら嬉しい。
ただ、そう思った。