その視界を彩るもの
三人での「お茶会」は滞りなく進んだ。
やっぱり元は一緒に住んでいた仲の良い家族なのだから、解り合えない筈なんて無くて。
‥‥お茶会って言うか、ほぼ「食事」だったけれど。
最初はあたしの言葉を借りつつイサゾーと話を進めていた梢ちゃんだったけれど、今はもう大丈夫。
あと、発見がもう一つ。
最近の奴を見るに付けて「オネエ言葉は単なる装飾なんじゃないか」疑惑があたしの中で浮上していたのだけれど、その疑いは綺麗さっぱり晴れた。
だって梢ちゃんはイサゾーに『アンタ最近どうなのよ、調子は』なんて問い掛けられても平然としていたから。
イサゾーがオネエ口調で話す切っ掛けは梢ちゃん。
ここまで考えたら、あたしはその趣旨についてもっとちゃんと思考を及ばせるべきだった。
今思ったってもう、遅いけど。
「―――‥あ? あれって"天3番"の柳じゃね?」
久し振りに聞いたその名称。
ほぼ反射的に声の主のほうへと視線を投げれば、軽く10人くらいは居そうな集団がイサゾーをちらちらと見ていて。
無意識の内に背筋を冷や汗が伝う。
駆け寄るように少し離れた場所に居るイサゾーのところへと向かって「イサゾー、」そう声を掛けたけれど。
鋭く射るようにその方向を凝視するイサゾーを見て、あたしの声は届いていないだろうなって。
ただ呆然と立ち尽くす。
その手に隠されるように抱かれる梢ちゃんの華奢な肩。
あたしのちっぽけな声音は雑踏に紛れて消えてしまった。