その視界を彩るもの
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見慣れない駅。いつもなら二駅向こうで下車し乗り換えるから、この場所で降りるのは初めてかもしれない。
各駅じゃないと止まらない小さめのホーム。
疎らに車内から出て行く人たちに紛れこむようにして下車したあたしは、再度走り出した電車を尻目に改札へ向かうべく方向転換。
辿りついた改札で予め料金の入れてあるスマホを翳せば、難無く通り抜けることができた。
待ち合わせはこの駅で間違いない筈なのだけれど。
きょろきょろと彷徨わせるように視線を巡らせていると、昨日見知ったばかりのカオを発見して思わず頬が綻んだ。
「お待たせ」
『、アンタ!』
「驚きすぎじゃん? やっほー」
『やっほー、って……。はぁもう、いいから。行くわよ』
トントン、と制服に包まれた肩を叩けばビクリと上下したそれ。
思わず吹き出すように笑みをこぼしていれば、瞬時に頬へと赤を迸らせたおねえイケメン。
フランクに挨拶してみせるあたしを呆れたように一蹴したそいつは、ブレザーに包まれた腕を乱雑にポケットに突っ込むなり脚を繰り出し始めた。
その、まるで"オトコ"みたいな動作が意外できょとんと間抜け面を晒すあたし。
あたしが付いて来ないことを不審に思ったらしい奴は振り向くなり顔を顰めて、一言。
『なによ。行くんじゃないの?』
「………ああ、うん。行く行く」
『ほんとアンタって、なに考えてるのかわかんないわ……』