その視界を彩るもの




「――‥梢ちゃんごめん。なにも聞かずに一緒に走って」

「わ、!?」


その華奢な手を再びぎゅっと握り締める。

そして有無を言わせず走りだした。

後ろで梢ちゃんの戸惑う声がする。

そして背後から鳴る靴音も共にテンポを速めたからあたしはほぼ確信した。


梢ちゃんに言う余裕も無かったし、何しろこれ以上彼女を下手に刺激したくない。

激昂した梢ちゃんをビンタするのはもう懲り懲りだ。



着地のたびに襲いかかるヒールの衝撃に脚が竦む。

だけど此処で立ち止まる訳にはいかないから。


喉が焼け付くように痛い。

呼吸が乱れて上手く酸素を取り込めない。

だけどそれでも、この場でじっと蹲るよりかはマシだった。

それに梢ちゃんの身を危険に晒すわけにはいかない。だってアイツと、約束したから。


『ウイ。梢のこと頼んだ』




頼まれたからにはこの役目を全うしなくちゃ、イサゾーに顔向けできないじゃないか。



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