その視界を彩るもの




「おいッ、篠崎!?」


背後から聞こえるその声に一瞬だけフッと口許を緩める。

アンタさあ、喋れるならもっと早くに声掛けてよ。

無駄に走って逃げちゃったじゃん。



ねえ、‥‥万里少年?




「梢ちゃんのこと頼んだから。傷付けたら、承知しない」


早口で捲し立てるようにそう口にしたあたしを、万里少年がどんな表情で見たのかなんて知らない。

だって、強い口調で挑発していたって‥‥本当は。

本当は、あたしだって。





「どうしたの?あたしに用があるんでしょ?じゃあ場所移動したほうが良いんじゃない?」

「‥‥てめぇ、もしホラ吹きやがったら生きて帰さねえからな?」

「安心して、嘘は言ってない。あたしは間違いなくシノサキウイだ。‥‥後ろの彼が証人になるんじゃない?さっき、名前呼んでくれたし」


口角上げてそう言葉をおとしたあたしとは対照的に、「しまった」と言わんばかりに強く息を呑みこんだ万里少年。

別に良いんだよ少年、気にしないで。

て言うかそれよりもまず、早くこの場所から移動しなきゃヤバいんだって。


あの梢ちゃんの様子を見て気付かないほどあたしはどうやら鈍感じゃないらしい。







【梢の過去は――】


‥‥ねえ梢ちゃん。

数年前の事件に梢ちゃんを巻き込んだのって、コイツラなんじゃないの?



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