その視界を彩るもの
少しも時間を置かずに現れた黒いバン。
全てがスモークフィルムで覆われたその車は明らかにカタギのものじゃない。
「乗れ」
命令口調のその言葉と共に乱雑に車内へと押し込まれる。
遠くで梢ちゃんの声がした。
万里少年が焦って駆け付けようとしてくるのも見えた。
その光景の成り行き全てを見届ける前に、鋭い音を立てて目の前をドアが遮断した。
‥‥そして車が走りだしたと覚ったときには、形容し難い恐怖がじわりじわりと胸中を脅かしていくのを確かに感じていた。
ゆっくりと、でも‥‥着実に。