その視界を彩るもの
『―――…マズイことになったかもしれない。ナツキは街に出回ってる"柳の噂"、もう聞いた?』
『一通りはな』
『それなんだけど。尾ひれは尾ひれでもマズイ部類の奴が付いたみたいだ。柳の【 妹 】の件あったじゃん、それが全部アイツの女の篠崎だってことになってる』
『……』
『だからこのまま泳がせておくのは結構ヤバイ。仮に柳の【 妹 】が【 被害者 】じゃなくても、連中が今度は篠崎を狙う可能性は否定できない』
今度こそ絶対に届かないと解っていても、助けを求めてしまう相手はイサゾーただ一人だけだった。
あたし、強くなんてないよ。
‥‥恐いよイサゾー。強がってただけなんだよ。実際のあたしはこんなにもちっぽけで、弱いのに。
どうしようもなく恐怖に呑まれて、目の前を暗幕に覆われた気がした。