その視界を彩るもの




"ああ。それなら何人かもうすでに行かせたから余裕だろ。‥‥その前にまず勇蔵がヤラれるわけない"

「‥‥相変わらずの仲間愛だね」

"本当のことを言ったまでだ。万里はどうする?"

「あー‥‥、できれば今すぐ奴らの車追いたいんだけど。バイクあるし」


ちらりと視線を下げて柳の妹を一瞥した。

‥‥こんなときでも俺は眼中に無いわけ?本ッ当にムカつく女。これじゃ篠崎のほうがまだマシ。




「柳の妹が居るんだよ。しかも重度のオトコ嫌い。‥‥どーすんのこれ」

"勇蔵に連絡付けて向かわせればいいだろ"

「‥‥それが最善かもしれないけどさ」


大袈裟に重苦しい溜め息を吐き出す。

「ちょっと待ってて」‥‥電話口向こうのナツキにそう告げるや否や、腰を屈めて女の視線を掌握した。

そしてその黒曜石のような瞳をジっと見据える。

その瞬間にビクリと身を委縮させた女を色の無い温度の低下させた眸でひたすらに見つめた。






「アンタさ」

「ッ」


わざとその耳に息を吹き込みながら音を紡ぐ。

相当性格悪いって?よく言われるから気にならないね。





「‥‥このこと柳に言うなよ?篠崎が連れ去られたことも、その相手が【アイツラ】だったことも」

「っ、な‥‥」

「言ったらどうなるか解ってる?今度は俺が相手なってやってもいいよ?その古傷抉りだしてやるよ」

「!!」




真っ青に表情を一転させた女――柳の妹を見て故意的にクツリと笑みを浮かべてやる。

‥‥そうだ。別にヤりたくなんてないけど出来ないわけじゃないし?

この女が柳にこのことを言えば最悪の結果を生むのが目に見えている。

それなのに放っておけるほど、俺はお優しい人間じゃない。



< 260 / 309 >

この作品をシェア

pagetop