その視界を彩るもの




        - 勇蔵side -



叫ぶように放たれた梢の声を聞いて一瞬息ができなかった。

ウイが、‥‥ウイが、攫われた?

梢を襲った連中に?



『‥‥なんで‥‥』



呆然とこぼした呟きに万里は答えること無く「あーあ」と頻りに残念がっている。

そのまま何を告げるでもなく懐から取り出したスマホを指でタップし、耳に宛がって。



「ナツキ。柳にバレタ」



なんの驚きすらも混じずにそんな言葉を落とすもんだから、自分の中で何かが切れる音がした。





『そんな大事なこと隠してたのかよ万里!? ‥‥ナツキまで!!』

「‥‥だから黙ってたに決まってんじゃん。その女マジで使えない。あーもう、計画台無し」

『人の妹巻き込むんじゃねえよ!!』

「は?」


気だるさから一転、鋭い目付きで睨み据えてきた万里の口調が急変する。






「‥‥誰が誰を巻き込んだって? 俺らがお前に巻き込まれてんだよ!柳!全部お前のせいだろうが!!」





鋭く繰り出された蹴りが道端に転がるポールの形をぐにゃり、湾曲させた。

それを一瞥してから縫い付けていた脚を万里に向かって進めていく。

勢いを殺さない内に奴の胸倉を掴み上げると、激昂した万里も同じようにコッチの襟元を鷲掴んだ。





『‥‥もういっぺん言ってみろよコラ』

「だからテメェのせいで"天龍"が巻き込まれてるんだっつってんだろ!!」

『は?なんでそうなるんだよ?そっちはそっちで好き勝手やってんだろうが』

「テメェがろくに顔も出さねぇくせに名前だけ置いてるから今回みたいな件に繋がるんだよ!!」



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