その視界を彩るもの




ぎりぎりと掴む腕に力を込めていけば万里も対抗するように手に力を込め始める。

今にも引き千切れそうな服を加減なしに引っ張り引き寄せながら。



『‥‥もし仮にそうだとしても。俺がウイを助け出せばてめぇらは何の被害も受けなくて済むだろうが』



低く鋭く‥‥殺気を滲ませながら放ったその言葉に万里は一瞬返答に詰まる。

その隙をついて畳み掛けるように『ウイの場所を言え』と詰め寄れば、漸く落ち着きを取り戻したらしい万里が再度口を開く。





「‥‥言ったら柳はどうすんの、行くわけ?一人で?」

『当たり前だろうが』



コッチの襟元を掴み上げる万里の力が緩んだから、それを機に締め上げていた手を離してやる。

少しだけ開いた距離。

尚も射竦めるようにギラギラと熱のこもった眸で牽制してくる万里を睨み返す。






「殺さないって約束するなら、教えてやってもいいよ。‥‥ただしナツキと俺も行く」





その答えを耳にして始めて、ずっと強張らせていた表情を緩めることができた。



< 266 / 309 >

この作品をシェア

pagetop