その視界を彩るもの
そう、あれは確か―――‥
- 万里side -
俺たちが現場に到着したとき、廃墟と化したその場所はひっそりと静まり返っていた。
既に激昂している柳が肩を怒らせて中へと入り込もうとするから、宥めるのにナツキはほとほと手を焼いている。
放っておけば良いのにって思わなくもないけれど、そこがナツキの良いところだから。
『ウイッ!!!』
廃墟の中へ叫号をとばす柳は今にも駆け出してしまいそうだ。
別に急ぐなって言っている訳じゃない。
冷静さを欠いた状態で乗り込んだって、相手に隙を見せるだけだってこと。
「ちょっと柳‥‥落ち着きなよ。そんなに頭に血のぼらせて行ったって意味ないだろ」
『いいから離せよ万里ッ! ウイ―――ッ!!居るなら返事してくれよ!!』
「勇蔵」
『ナツキも離せやッ』
こりゃもう駄目だ。だからコイツと一緒に行くの嫌だったんだよ。
ここまでの道すがら家に落としてきた柳の妹を思い浮かべては忌々しい気分になり、舌打ち。
本当に使えないんだけど、あの女。
余計なこと真っ先に口走りやがって。
ほぼ疾走状態に陥った柳をナツキと一緒に追い掛けていく。
余計なことを考えている余裕だって正直無いに等しい。
て言うか篠崎って無駄に男勝りな奴だから、仮に犯されちゃってても案外ケロッとしてるんじゃないの?
‥‥まあこの俺の考えは甚だ安直だったって、後に突き付けられたけれど。