その視界を彩るもの
『‥‥』
「柳?」
ゆらりと覚束ない足取りで歩を進め始めた柳を怪訝な眼差しで牽制する。
動き出した柳を見て次第に局部を仕舞い始めた奴ら。
迎え撃つつもりなのか、その表情は好戦的なそれに染まっている。
『‥‥‥殺す』
その言葉を聞いて驚いたのは俺らだった。
アイッツ!絶対にあの約束忘れてやがる!
右手を固く握り締めて駆け出した柳。
慌てて走りだそうとしたけれど、隣に居た筈のナツキが驚くほどの俊足で柳の隣に立ち並ぶ。
そして柳よりも先に繰り出したアッパーで敵の一人を仕留めに掛かった。
「勇蔵」
ナツキの持つ色素の薄い瞳が光に反射して妖しげな雰囲気を醸し出す。
ターゲットを盗られた柳は不服そうにナツキを睨み据えていた。
「‥‥目的を見失うな。お前は、その女を助けに来たんだろ」
『‥‥』
「そんなに殺したきゃ俺が代わりに殺してやる」
その台詞に度肝を抜かれたのは俺だ。
思わず目を最大限に見開いてナツキを凝視したけれど、スッと流された視線に直ぐ様脱力した。
‥‥どうやら柳を説得するためにホラ吹きやがったらしい。