その視界を彩るもの

/ここって家賃いくらなの







「お邪魔しまーす……って、あれ?」

『なによ』

「まさか……一人暮らし?」



案内された一室の扉を潜り脱いだローファーを揃え、ぐるりと部屋の中を見渡したあたしはポツリと洩らす。

このマンションの外観。それはもう酷いものだった。

今にも倒壊しそうなボロ屋敷。相手の私情にはなるたけ突っ込まないと胸に誓ったものの、さすがにこのマンション(ていうかアパート?)を見たときは口にしてしまった。






「まさかココなの!?」

『そうだけど』

「………」



あまりにおねえイケメンがケロッと返答するものだから、あたしも口を噤まざるを得なかったけれど。

まあ、人間いろいろあるよね。



先刻交わしたばかりのやり取りを思い浮かべながら室内へと走らせていた視線を回収し、再度やつへと向き直ったあたしは言葉を選びつつも。







「あのさ、野暮なこと聞いてもいい?」

『イヤ。………って言ってもどうせ、聞くんでしょ』

「さすがのあたしも無理強いはしないよ」

『いいわいいわ、そーんな子犬みたいな目でジっと見られるのも居心地悪いし。 で、なに?』








同じくローファーを脱いで並べた直後らしく、するりと立ち上がったおねえイケメンを数秒の間見つめるあたし。

ほんと分からない。知れば知るほど謎が深まる人間なんて、後にも先にもコイツだけだろうと思う。




「この部屋、月いくらなの」










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