その視界を彩るもの
放課後も自宅から最寄りの駅までアカネたちと帰路に就いていた。
‥‥この子たちも母親と同じ。
何があったのか絶対に気になってる筈なのに、その疑問は口にしない。
もし聞けばあたしがココロに負った傷が開くって、きっと理解してくれているから。
あの場に居合わせなかった、言ってみれば詳細を知らない人間と居るのは然して苦では無かった。
だからあたしは少なからず笑えていたと思う。
でもこんなふうに微温湯ばかりに浸かっていたら駄目だって、頭の片隅で理解しては居た。
「じゃあ初、また明日ね!」
大袈裟なほど大きく手を振って声を張り上げてくる三人にちょっと笑って手を振り返す。
学校を出てから今の今まで、朝の嵐は嘘かのように静まり返っていた天候はここに来て一変した。
いきなりの横殴りな雨、吹き上げる強い風。
傘を手にしながら家までの僅かな距離を進むのですら正直苦しくて、何度も立ち止まってやり過ごす。
傘を盾にしていれば幾らか進み易く感じた。
―――‥ただ、そのせいで【そのひと】に気付くのが遅れてしまって。
家の前まで辿り着く。
申し訳程度に設置された家の門に手を掛けたそのとき、塀に寄り掛かるたった一人の存在に嫌でも気付かされる。