その視界を彩るもの




パシリ、あたしの腕を柔く‥‥でもしっかりと、逃げられないように掴んだその人は。

傘の下から見上げるあたしを、ずぶ濡れの制服姿で捉えたその人は。



『やっと‥‥初、ずっと待ってた』




余っ程今にも泣き出しちゃうんじゃないっかってくらい眉尻を下げて視線を寄越すその人は。




「イサ‥‥ゾー」




本当に暫くぶりに見る、あたしが焦がれてやまない相手――‥柳勇蔵その人だった。



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