その視界を彩るもの
あたしの言葉を聞いて今度こそ驚きを見せたイサゾー。
悲しんでいるよりだったら、そっちのほうがずっと良いよ。
「王子様」だって騒がれる顔立ちを惜しげもなく駆使して目を丸くするイサゾーを見て、なんだか少しだけ笑えた。
「‥‥本当はずっと前から好きだった。最初は友だちとしてだった筈なのに、イサゾーの隣は居心地好くて」
ファンの子たちに嫉妬してしまったりもして。
‥‥これは恥ずかしいし困らせるだけだから、言わないけれど。
「好きになる気持ちを止められなかった。ずっと触れたかったし、言いたかった。‥‥こんなことになるなら、臆病にならないでちゃんと伝えれば良かったんだけど」
そう言いながら少しだけ視線を下げると、イサゾーの履くローファーが視界に映り込む。
‥‥嗚呼、なんだか出逢ったときを思い出すなあ。
そして言葉に詰まって一度大きく深呼吸。
だって、本当に伝えなきゃならないのは「ここから」だから。
「‥‥でももう終わりにする。好きだった、大好きだったよイサゾー。会わなくなっても元気でね」
イサゾーを「あたし」の呪縛から解放してあげる。
だってこうしてピリオドを打たなきゃ、優しいコイツはきっと罪悪感を抱えてずっとずっと通ってくる。
そんなの、あんまりだ。