その視界を彩るもの




衝撃的すぎるイサゾーの一連の言動に目ばかりが釘付けになって、一瞬ここが外で今まさに嵐に吹かれているということすら忘れていた。

ゴウゴウと唸る風の音すらシャットダウンしてしまうほど、イサゾーの告白とキスは驚きを伴ったから。



「ま、待ってイサゾー!!口は駄目じゃん、だってあたし【アイツラ】に――」

『そんなの関係ないわよ』

「‥‥関係ないって‥‥、穢されたんだよ?」



何をされたのかなんて思い出したくもないし、言いたくもないけれど。

でもそれは紛れもない「事実」な訳で。

その現場を他でも無いイサゾーはしっかり目にしてしまっている訳で。





『穢れてなんてないわよ。初は初で、変わらないじゃない。‥‥あんなの見たくらいで変わるほどアタシの気持ちはヤワじゃないのよ』




フン、と鼻息を荒くしてそう言ってみせるイサゾー。

何がなんだか解らなかったし、まさかそんなふうに言ってくれるなんて思いもしなかったから。














『で? 付き合うの、付き合わないの?』




挑発的におとされたその台詞だって、あたしの答えは前者に決まっている。

だってずっとずっと抵抗を感じていた【アノ行為】の名残がスッと消えた気がしたから。

イサゾーはいつだって、あたしを光に導いてくれる。


好きなんだから仕方がないじゃないか。

イサゾーの視界を彩る数多くの光景の中に、少しでも「あたし」を見出してくれたら。



いつだって救われる。

その手に、その背に身を委ねて。





         【終】




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