その視界を彩るもの
腕をその背中に目一杯にまわす。
確かにイサゾーと沢山の月日を共に過ごした。キスだっていっぱいした。
「イサゾーはきっとあたしよりも過去に囚われてる。あたしはもう疾っくの昔に決意してるんだよ」
『‥‥ウイッ』
遠慮無しに身体を密着させていくあたしと、逃げ腰になるイサゾー。
だからその逃げ場を奪うように首に腕を絡ませて強制的に目を合わせさせた。
「女のあたしに誘わせないでよ」
『‥‥』
「イサゾー」
その表情からひとつの機微ですら取り零すことの無いように、額を付けて窺う。
後頭部に寄せる手でクシャリ、お揃いの髪を掻き抱いた。
『‥‥後悔しない?』
「うん」
『絶対に?』
「絶対」
目を合わせたまま強く頷いた瞬間、間を置かずに深い口付けをおとされる。
顔を傾け貪るように舌を絡ませてくるから、後頭部に添えていた腕を首の裏に移動させた。
『‥‥ウイ、』
くっきり二重の眸を歪めてあたしの名を呼ぶイサゾー。
だから「うん」‥‥答えて目を閉じ受け入れる。
尚もその背筋にまわした腕でしがみ付くように抱き締めていれば、微細に震える唇があたしの首筋に華を散らしてゆく。
そのたびに襲ってくる痺れに既に酔い痴れてしまいそうだった。