その視界を彩るもの
「んんっ」
体温のあるその大きな手に、めちゃくちゃに揉み拉かれる感覚。
得たことのないその感覚のせいで甘い吐息がこぼれ落ちてしまう。
『‥‥意外とあるんだ』
「なにそれっ、貶して『褒めてんだよ』
クスリと余裕綽々に笑ってみせるイサゾーがズルくてむすっと頬を膨らませる。
暫く口を尖らせていたあたしだったけれど、そんな反抗は長く続かずに終りを告げることになる。
視線の先で捉えたイサゾーの赤い口。
その口腔が一瞬だけ目に飛び込んだその直後、乳房中央の突起に迷い無く口付けるから又しても溜め息に似た吐息があたしの口から飛び出した。
恥ずかしさを助長させるかのように水温が室内に鳴り響く。
その度に背筋を駆け上がる甘い痺れに溶かされてしまいそうだった。
「‥‥っ、」
両手で押さえ込むように包んでいた唇からヘンな声が出てしまわないように。
日の落ちる前からこんな行為をしていること自体酷く背徳的に思えてきて、せめてもの思いでそこは強く我慢していたのだけれど。
『なんで隠してんの』
「‥‥まッ、外しちゃ‥‥んんッ!」
『我慢しなくてイイから。言ったろ?ぜんぶ見せてって、‥‥‥嗚呼この場合は「聞かして」か』
なんかイサゾーの口調おかしいんだけど!
オネエ口調でもなく最近のものでもなく、その「男」っぽい喋り方はまるで喧嘩のときの―――
『ウイの心も身体も声も、――‥ゼンブ「俺の」だから』
そんな独占欲剥き出しのイサゾーにキュンとしてしまうあたしは、やっぱりどこか変なのでしょうか‥‥。