その視界を彩るもの
――――数時間前、初と勇蔵が駅で落ち合い並んで街頭へと姿を消した直後のこと
「……ふーん。"柳勇蔵"じゃん、アレ」
膝上25センチ。初よりも短いスカートを覆うだぼっとしたカーディガンのポケットに腕を突っ込んだのは、明るく染色された髪を普段からアップでまとめる彼女。
そのルージュの乗せられた唇は妖しいほどカーブを描いており、クスリとおとされた微笑は誰の耳に入ることもなく空気の中に紛れ込む。
「初ってばやっぱオトコ、できてたんだねぇ」
至極面白げに歪められた口許。しかしながら彼女は既に去った彼らを視線で追うばかりで、自らの脚を動かすことはしない。
紅葉も既に終わり頃。
はらりと色付いた葉が地面に吸い込まれていく様を一瞥した彼女は、すぐに取り出したスマホに何やら文字を打ち込んでいく。
――――ゲームを持ち掛けた"頭"が動くことは、まだ、無いのだ。